アルツハイマー型認知症になるメカニズム

アルツハイマー型認知症のメカニズムは、まだ完全には解明されていませんが、多くの研究により、いくつかの主要な要因と過程が関与していることが分かっています。アルツハイマー病の発症には、脳内で異常なタンパク質の蓄積や神経細胞の機能障害が関与しており、次のようなメカニズムが主に注目されています。

1. アミロイドベータ(Aβ)の蓄積

アルツハイマー病に特徴的な病理現象の一つは、脳内にアミロイドベータ(Aβ)という異常なタンパク質が蓄積することです。

  • アミロイドプラーク: アミロイドベータが過剰に生成され、脳の外側に「アミロイドプラーク」と呼ばれる塊を形成します。これが神経細胞の間に蓄積し、神経伝達を妨げると考えられています。
  • 神経毒性: アミロイドベータ自体が神経毒性を持ち、神経細胞にダメージを与えることが示唆されています。

2. タウタンパク質の異常

もう一つの主要なメカニズムは、タウタンパク質の異常です。タウタンパク質は通常、神経細胞の内部で微小管という構造を安定化させる役割を担っています。

  • 神経原線維変化: アルツハイマー病では、このタウタンパク質が異常に変化し、「神経原線維変化(ニューロフィブリラリ・タングル)」と呼ばれる糸状の構造を形成します。この変化により、神経細胞内部の輸送システムが崩壊し、神経細胞が機能不全に陥ります。

3. シナプスの損傷

アルツハイマー病の初期段階では、シナプス(神経細胞同士の接続部分)が障害されます。シナプスは、情報を伝えるための重要な役割を担っていますが、アミロイドベータやタウタンパク質の異常により、これが破壊されてしまいます。シナプスの減少により、認知機能の低下が始まります。

4. 神経細胞の死滅と脳萎縮

アルツハイマー病の進行に伴い、神経細胞が徐々に死滅し、脳全体が萎縮します。特に、記憶を司る海馬や認知機能に関連する大脳皮質が著しく影響を受けます。この脳萎縮により、記憶力や判断力、問題解決能力が低下します。

5. 炎症と免疫応答

最近の研究では、脳内の炎症反応がアルツハイマー病の進行に関与していることが示唆されています。アミロイドベータの蓄積に対して、脳内の免疫細胞(ミクログリア)が炎症反応を引き起こし、結果的に神経細胞がさらにダメージを受けることがあります。

6. 遺伝的要因

アルツハイマー病の発症には、遺伝的要因も関係しています。

  • APOE4遺伝子: 特にAPOE4という遺伝子型を持つ人は、アルツハイマー病のリスクが高いことが知られています。この遺伝子は、アミロイドベータの代謝や除去に関わると考えられています。
  • 家族性アルツハイマー病: 家族性のアルツハイマー病は、比較的若年で発症することが多く、特定の遺伝子変異(APP、PSEN1、PSEN2)が関与しています。

7. 血管因子とその他のリスク要因

アルツハイマー病の発症リスクには、血管因子も関与しています。高血圧、糖尿病、コレステロール値の異常、喫煙などの生活習慣病は、アルツハイマー病のリスクを高めるとされています。また、頭部外傷や運動不足、食生活などの要因もリスクに影響を与えると考えられています。

8. ミトコンドリア機能障害と酸化ストレス

ミトコンドリアは細胞のエネルギー源を提供する役割を持っていますが、アルツハイマー病ではミトコンドリアの機能障害や酸化ストレス(細胞の酸化ダメージ)が認知症の進行に関与していることがわかっています。これにより、神経細胞のエネルギー不足やさらなる損傷が引き起こされる可能性があります。

結論

アルツハイマー型認知症のメカニズムは、多因子にわたる複雑なプロセスで構成されています。アミロイドベータやタウタンパク質の異常が中心的な要因として考えられていますが、炎症、遺伝、血管因子、酸化ストレスなど、さまざまな要素が絡み合って病気が進行します。