最後の笑顔

認知症を発症して妻からすっかり笑顔は消えました。

2018年頃です。

病気になってから普段は不機嫌で少し怒っているような感じでそれ以外何の感情も顔に出すことがなくなりました。

認知症になる前は不機嫌とか怒るとかはまったく無縁の人でした。

それに加えてまったく人格も変わってしまいました。

それは突然と言っていいくらいの驚きの変わりようでした。

その後2020年の10月に入院することになったのですが、それ以降コロナの影響でまったく直接面会することが出来ませんでした。

ただただ毎週洗濯したものを病院に届けるというのが自分に出来る唯一のことでした。

それが急に妻に別の病気の疑いがあるということで病院から連絡があり、入院している病院では扱っていない科目だたのでわたしが別の病院に連れて診てもらうように頼まれました。

入院してから8か月してからの話です。

その間全く会うことが出来なかったので、とてもうれしかったのを覚えています。

その時本人は手で支えてあげればなんとかゆっくりと歩ける状態でした。

看護師の方からの話では入院したての頃、入院しているフロアの階を端から端までいつも徘徊しているということではありましたが。

もちろん会話は出来ませんでした。

本人はただぽつりぽつりと時折独り言を言っていたのを覚えています。

言っている意味はまったくわからなかったのですが。

結局診てもらって、幸いなことに特別深刻な病気ではなかったのですが、検査や治療ということで4カ月、5か月別の病院へ連れて行きました。

頻度としては週に1回とか最後の方は2週間に1回とかでした。

その時わたしは仕事を休んで連れて行ったのですが、懐かしさもあり会えて良かったという感情で一杯でした。

ただその時自分に出来ることは病院に付き添って連れて行くということだけでした。

そして車に乗せて連れていく時、めったに妻に会えないのでスマホで写真を撮ると本人なぜか少し微笑んでいました。

普段本人は感情をまったく表さないのでこれにはわたしも本当にうれしくなりました。

これが今思えば妻がアルツハイマー型認知症になって入院してから見る、最後の笑顔でした。

妻が亡くなって残念で悲しくて、かわいそうでなりません。

今となっては取り返しのつかないことになってしまいました。

わかっています、どうすることも出来なかったということを。